PTSDは、Post Traumatic Stress Disorderの略で“(心的)外傷後ストレス障害”のことです。アメリカのベトナム戦争帰還兵の“心の傷(心的外傷)”の問題が多発した頃から発展した概念であり、1980年以降、ひとつの疾患単位として認められてきました。
PTSDにおける“心的外傷”とは、自分の生命や安全を極度に脅かすような特別なできごとを直接・間接に体験した事で、そのことに本人が強く反応し、その不条理な体験が心に焼きついてしまい、そのために心のシステムにひずみが生じた状態をいいます。
PTSDの症状
PTSDとして出てくる症状は、主に以下のようなものがあります。 ◯外傷体験のくり返しのイメージ(悪夢やフラッシュバックなど) ◯覚醒レベルの亢進(不安緊張、刺激性の亢進、睡眠障害、集中困難など) ※亢進[こうしん]:高い度合いまで進むこと。 ◯外傷を思い出すようなことがらを避ける ◯反応性が低下し、うつ状態や現実感覚の低下をきたす
ASD(急性ストレス障害)とPTSDの違い
特別な体験から症状の持続が1ヶ月以内の場合はASD(急性ストレス障害)、1ヶ月以上持続する場合をPTSDとして区別しています。また、体験からかなり期間が経ってから症状が出現する場合を、遅発型PTSDと呼んでいます。
外傷体験の例
外傷体験の例としては、以下のようなものがあります。 ◯急性外傷体験 自然災害や戦争、誘拐や凶悪犯罪、レイプ等の性的虐待、など
◯慢性外傷体験 長期におよぶ虐待(性的虐待を含む)、いじめ、養育放棄、など 外傷体験からすべての人がPTSDになるわけではなく、そこには個人的要因(性格、素質など)と現実の支援態勢の有無・良否などの要因がからんで発症します。
外傷体験と精神障害の関係性について
最近は、アルコール依存症・摂食障害・人格障害(境界性人格障害など)・解離性障害(多重人格)の症例における家族研究から、 これらの障害と心的外傷体験(特にレイプや虐待など)との関連が指摘されています。
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