アルツハイマー型認知症(Alzheimer's Disease[AD])では、病気が高度に進行するまでは、体の一部の自由が利かなくなるといった、神経症状が認められないと言われています。
しかし、以前から「認知症」と診断される方々の中に、比較的早い時期からパーキンソン症状がみられる一群があると注目されていました。
※パーキンソン症状:手足の震え、前屈みの姿勢、体の動きがぎこちなくなる、歩き出しにくく止まりにくい歩行状態、表情に変化が無くなる
これを病理学的(脳の切片を顕微鏡で見た場合)に見ると、アルツハイマー型認知症に特徴的と言われる老人斑(シミのように見えるもの)の他に、レビー小体(Lewy bodies)がみられる一群があることから、「レビー小体型認知症」という疾患概念が1995年に確立し、このような病気がある事が認められました。 レビー小体型認知症は、有病率(病気にかかっている人の割合)が高いということがわかっており、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症と並べて、「3大認知症」と呼ばれることもあります。
レビー小体型認知症の症状
症状としては、
①注意や意識レベルの変動(一日中ウトウトしている)
②パーキンソン症状(上述)
③幻視(実在しないものが見える)
以上の3つが、中核的な症状です。これらの症状のほかに、睡眠時の異常言動(寝言・手足をばたつかせる)、失神、抑うつ症状、幻聴や妄想(被害妄想や嫉妬妄想)、体のことをひどく気にする傾向などを認めることがあります。
③の幻視については、人や人影が見えるとういう方が多く、夕方や夜間そして早朝に見られることが多いのが特徴です。また、幻視以外にも様々な視覚に関する異常現象を認めることがあります。
また、初期には記憶障害が目立たないことがあるので、パーキンソン病と診断されていたり、他の精神疾患と間違えられることがあります。
レビー小体型認知症の治療薬
治療薬としては、塩酸ドネペジル(商品名:アリセプト)が効果的とされています。 治療上注意すべき点は、抗精神病薬(強い安定剤)に対する副作用(パーキンソン症状)が強く出現することです。副作用により転倒の危険につながることがあります。
レビー小体型認知症と介護
この様な特徴を持つレビー小体型認知症は、介護する立場から見ると非常に対応が難しい病気であることがわかります。介護の難しさでよく言われるものは、
●幻覚症状や睡眠障害の対応で夜に眠れない
●被害妄想や嫉妬妄想の攻撃対象となりストレスを感じる
●転びやすいので一日中目が離せない
●ウトウトすることが多いので日常生活の介助に時間を要する
などです。
このように介護者の負担は非常に高いため、強力なサポート体制が必要となります。
精神症状が多彩なため、その症状に対してどの様に対応すればよいのか、適切な指導を受けられるようにしておきましょう。また、転倒事故を防ぐための対応も必要です。 介護者の睡眠不足を解消するためには、昼寝をしたり本人の睡眠リズムに合わせて睡眠をとるようにするなどの工夫が必要です。また、ケアプランにおいてショートステイを利用するなどして、介護者が十分に休養をとるようにすることが必要になるでしょう。
Comments