「うつ病」という病名は臨床の現場ではよく使われますし、一般社会でもその名称はかなり知れ渡っています。しかし国際的な診断基準の中では、「うつ病」ではなく、感情障害や、気分障害という病名が使われています。同様に、躁うつ病は双極性障害と呼ばれています。
もともと、気分障害や双極性障害などの「障害」という言葉は、英語の"disorder[ディソーダー]"を訳したもので、disorderには無秩序・混乱といった意味合いがあります。すなわち秩序や調和、一定の果たすべき機能が崩れて、いわば病的状態に陥っていることを意味するものです。
神経症性の病気についても、強迫神経症は強迫性障害、不安神経症は全般性不安障害などと呼び名が変わってきました。さらに、精神分裂病という病名も、病態にそぐわないとか、誤った暗いイメージを与えるとか、本人にとってもショッキングな病名だ、ということで、最近はこれに代えて、統合失調症という病名に変更されて使われています。 統合失調症という病名の方が医師も説明がしやすく、患者さんや家族の方も病気について、理解しやすく、また受け入れやすいようです。
病名だけ変えても病気の実態が変わるわけではありませんが、 大切なのは、病気の実態を正しく理解して、不合理な誤解や偏見をなくしていくことです。
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